事例06:大阪大学
産業科学研究所
川上茂樹 准教授 様
農産物から発生するエチレン、アセトアルデヒド測定による長期鮮度保持技術の開発
概要
導入の背景
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カビにより返品となったイチゴ(オランダ)
- 近時、日本だけでなく世界的にもポストハーベスト農薬に依存しない安全・安心な農作物の鮮度保持技術が求められています。
- 農作物の長期鮮度保持を実現するためには収穫後の農作物の硬度維持、糖度・酸度などの生理学的変動抑制やカビ発生抑制などの微生物学的制御技術など様々な異分野技術が必要となります。
- 特に農作物から発生する老化に関する植物ホルモンであるエチレンだけでなく親水性物質・アセトアルデヒドなど老化熟成に関与する揮発性物質は老化の指標となります。これら老化促進揮発性物質の変動を簡便にモニタリングする装置を探していました。
経緯
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稼働中のSGC®(SGEA-P3-C2)
- 本研究室では老化に関する植物ホルモン・エチレンを吸着・分解するポリエチレン製フィルムの開発を行い、開発したフィルムを用いてイチゴやメロンなど様々な農作物の長期鮮度保持に資することを明らかにしています。
- 先ず、開発したフィルムにより農作物から発生する老化ホルモン・エチレンがどのように変動するかモニタリングするためにSGEA-P3-C を導入しました。
- ところが老化ホルモン・エチレン分子を吸収・分解するポリエチレン製フィルムだけでは鮮度保持効果が発揮できない農作物があり、その原因物質がアセトアルデヒドなどの揮発性親水物質であることが明らかとなりました。
- そこで親油性物質であるエチレンと親水性物質であるアセトアルデヒドとを同時に計測できるSGEA-P3-C2 に仕様変更し、測定スピードを上げるため2 台目の同装置を導入し、2 台計測体制を確立しました。
成果
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世界最大のフード展示会で開発した鮮度保持技術を発表(インド)
- 様々な農業資材および薬品の中からアセトアルデヒドを50-ppb 以下まで短時間に吸着・分解する組み合わせがあるか、導入した2 台のSGEA-P3-C2 を用いて網羅的に調査を行いました。
- 安全・安心・可食可能な資材・ミネラル成分の組み合わせだけで効率よくアセトアルデヒドを吸着・分解する条件を見出し、大阪大学は特許申請を行いました。
- 老化ホルモン・エチレンだけでなく、老化・熟成促進物質であるアセトアルデヒドを効率よく分解する新規農業資材の組み合わせで長期鮮度保持が困難であるとされているイチゴやシイタケなど1 カ月以上貯蔵が可能であることを明らかにし、さらにそれ以上の長期保存が可能であるか現在検証しています。